第1章 秋作ジャガイモの品種選定:成功への第一歩
ジャガイモ栽培において、成功の可否は品種選定にかかっています。特に秋作においては、種イモの「休眠期間」が極めて重要な選定基準となります。休眠期間とは、収穫されたジャガイモが、次の新たな芽を出すまでに必要とする一定期間のことです。
春作ジャガイモの主要品種である男爵やメークインは、一般的に休眠期間が長いとされています。これらは5月下旬から6月上旬に収穫されますが、秋作の植え付け期である8月下旬から9月上旬までのわずか3か月では、休眠が明けず、ほとんど芽が出ません。たとえ運良く芽が出たとしても、冬が来る前に十分な成長が見込めないため、収穫はほとんど期待できません。
一方で、デジマやニシユタカといった秋作向けの品種は、この休眠期間が短く、植え付け適期に確実に発芽する特性を備えています。この品種特性は、温暖地における二期作(春作→秋作)を可能にする上で不可欠な要素です。休眠期間は、単なる栽培品種の「おすすめ」情報ではなく、秋作栽培を成功させるための最も重要な科学的根拠に基づいた「選定基準」であると言えます。
以下に、秋作ジャガイモの代表的な推奨品種とその特性をまとめます。
- デジマ: 秋作の代表品種であり、春作における男爵のような存在です。休眠期間が短く、生育が旺盛で多収性が高いことが特長です。肉質はやや粉質で、煮物からポテトチップまで幅広い料理に利用できます。
- ニシユタカ: 早期肥大性に優れ、多収量が最大の魅力です。肉質はねっとりとして硬めで、メークインの代替品種としても推奨されます。ただし、そうか病が出やすい傾向があるため、事前の土壌管理が重要です。
- アンデスレッド: 赤い皮と黄色い果肉が特徴的な品種です。育てやすく多収で、ホクホクとした食感が楽しめます。アンデスレッドやグランドペチカは「デストロイヤー」とも呼ばれ、猛暑に強く、休眠期間が短いため春作で収穫したイモを秋の種イモとして再利用することも可能です。
- その他: 比較的新しい「ながさき黄金」は、ホクホク感と強い甘みで食味評価が高く、収量性も優れています。また、馬鈴薯の元祖品種である「農林1号」も、男爵系のホクホクした食感が楽しめます。
表1:秋作推奨ジャガイモ品種特性一覧
| 品種名 | 食味(ホクホク/ねっとり) | 主な用途 | 収量性 | そうか病抵抗性 | 休眠期間 |
| デジマ | やや粉質 | 煮物、ポテトチップ、ポテトサラダ | 多収 | やや弱い | 短い |
| ニシユタカ | ねっとり、硬い | メークインの代替、煮物 | 多収 | 発生しやすい | 短い |
| アンデスレッド | ホクホク | ポテトサラダ、コロッケ | 多収 | 記載なし | 短い |
| ながさき黄金 | ホクホク、甘い | 煮物、食味NO.1 | 収量性良好 | 記載なし | 記載なし |
| 農林1号 | ホクホク | 煮物 | 記載なし | 弱い | 記載なし |
おすすめは「アイマサリ」
秋作ジャガイモの品種「アイマサリ」は、長崎県で育成された品種で、特に暖地の二期作栽培に適しています 。
特性と栽培のポイント
- 外観と食味: 「アイマサリ」は、目が浅く、皮が滑らかで外観に優れているという特徴があります。食味は「ニシユタカ」よりも優れており、ポテトサラダにすると明るい黄色でなめらかな食感に仕上がると評価されています。煮崩れしにくいという性質も持っています。
- 早期収量と肥大性: 「アイマサリ」は、早期肥大性に優れており、「ニシユタカ」に比べて早期の収量が多く、1個あたりの平均重量も重い傾向にあります 。秋作においては、「ニシユタカ」よりも多収であるとされています。
- 休眠期間: 春作で収穫した塊茎の休眠期間は67日程度、秋作では90日程度で、「ニシユタカ」よりも短いとされています。初期生育も「ニシユタカ」より早いため、秋植え栽培に適した品種と言えます。
- 病害虫への抵抗性: ジャガイモシストセンチュウとジャガイモYウイルスに対して抵抗性を持っています 。一方で、そうか病、青枯病、疫病には「ニシユタカ」同様にやや弱い傾向があります。
- 栽培上の注意点: 裂開が発生しやすい場合があることと、多肥にすると茎が徒長しやすいため、適切な施肥管理が必要であることが指摘されています。


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